コピーは足で書け!
もちろん、鉛筆やペンを足の指に挟んでコピーを書くことではありません。私がコピーライターになった80年代には、当然インターネットなどはなく、コピーを書くための参考資料は、本屋や図書館に足を運んで探すんです。
実際、私は広尾の中央図書館と国会図書館、それに八重洲ブックセンターの常連でした。
また真夜中の青山ブックセンター(麻布警察の近くにある朝まで営業している本屋)に行くと、服に切り張りした写植文字を付け、指先がペーパーセメントで黒くなった、一目でデザイナーとわかる同業者をよく見かけたものです。
(※今の時代に写植やペーパーセメントと言われても、たぶん分からないですよね。)
松下電器の企業広告なども担当していたので取材も多かったです。それに大規模展示会に行って競合他社のカタログなどを片っ端から集めたり、とにかくコピーを書くための情報は歩いて知るのが一番だったんです。
展示会といえば、今年はコロナ禍で、ネット展示会が多いとか。そういえば、ネット展示会用の動画コンテンツの話がありました。結局、見積競合で負けましたが…
あとで相手の見積を知ったのですが、驚きました。私個人のプロモーションビデオをお願いしたいぐらいの価格です。クオリティは大丈夫なのか知らん?
ネット社会になって、広告制作を取り巻く環境は日々変わり続けています。例えば、昨年の年間広告媒体費で、とうとうネット広告がテレビ広告を抜いちゃいましたよね。
またWebライターやセールスライターという職業が活況を呈しているようなので、まったくの素人の振りをして、昨年『ストアカ』の講座を3つほど聞きに行きました。還暦過ぎのコピーライターも一生懸命キャッチアップに努めているのです。
『ストアカ』の体験記は、またの機会に。すみません。ちょっと話が横道に逸れてしまいました。時を戻そう!
私が原稿用紙と“にらめっこ”していると、横の席の先輩コピーライターから、「時代の空気を感じるために、街を歩いてこい!」とも言われました。「時代の空気」「トレンディ」「ナウい」…すっかり死語ですがね。
思い返すと「街を歩いてこい!」は、時代の空気を感じるためではなく、街を歩いている間の気づきと、頭を整理するために必要だったのでしょう。
今でも煮詰まった時は「頭をガラ・ガラ・ポン!」するために歩いています。ただ、歩いた帰りに余計な店に立ち寄ったり、つい無駄な物まで買ったり…その習性だけは還暦を過ぎた今も昔も変わっていないようです。